内科

風邪(感冒、急性上気道炎)

どのような病気?

風邪=急性上気道炎を広く意味した言葉です。主に何らかのウイルス感染に伴うものを言います。ウイルスの種類によって、嘔気嘔吐・下痢・腹痛など、腹部症状をきたすこともあります。

原因は?

原因の大半がウイルスの上気道感染症です。ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなどが原因となることが多いです。広くインフルエンザウイルス、SARS-CoV2(COVID-19)によるものを指すこともあります。

症状は?何がまずいの?

ウイルスが粘膜に感染してその部位に炎症を起こすため、のどの痛み、発熱、たん、咳、鼻汁、鼻閉感、倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛、リンパ節の腫れ、食欲不振といった漠然としたいくつかの症状が出現します。典型的には発症早期にのどの痛み、発熱が出現し、順次鼻汁やたん、咳へと移行します。咳は時に1~2週間ほど長引くことがあります。発熱やのどの痛みは長引かないことが多いですが、ウイルスの種類によっては長引きやすいものもあります。また、風邪がきっかけとして中耳炎や副鼻腔炎、気管支炎などの合併症を引き起こすこともあり、インフルエンザウイルスでは一部のお子さんに脳炎を引き起こしたり、SARS-CoV2(COVID-19)では高齢者や糖尿病のある方は肺炎を引き起こすリスクが高いことも知られています。

治療は?

ウイルスに対する直接的な薬剤はなく、症状を緩和させる治療が中心となります。
熱、頭痛、のどの痛みにはNSAIDs(ロキソニン®など)やアセトアミノフェンといった解熱鎮痛薬が用いられます。NSAIDsには抗炎症効果もあるため、アセトアミノフェンよりも効果が高いと感じられることが多く、特に禁忌のない方には当院ではNSAIDsを処方しています。お子さんや妊婦さん、喘息が悪化してしまう方、腎機能に問題のある方、胃潰瘍のある方などにはアセトアミノフェンを用います。
風邪による鼻汁に対しては慣例的に抗ヒスタミン薬を処方されることがありますが、風邪による鼻汁に対して抗ヒスタミン薬は基本的に効果がないと考えられています。花粉症などによりすでに抗ヒスタミン薬を飲んでいる場合はやめる必要はありませんが、風邪の鼻汁がよくなる効果は乏しいでしょう。ただ、鼻汁がたんに変わり、のどの奥に落ちると咳となり、QOLが低くなるため、痰切りを飲んでいただくのが咳の改善にもなり良いでしょう。たんが咳の大きな原因になっていることは多く、たんを直接あまり感じない場合でも痰切りをしっかりと飲むと咳の改善にもなることが多いです。咳止めは咳があれば飲んでいただいた方が症状が改善しますが、完璧に抑え込むことは難しいのと即効性はないので、咳が出そうなタイミングで飲んでいただくのが良いでしょう。
関節痛や倦怠感、頭痛は発熱に伴う全身症状ですので、解熱鎮痛薬により改善することが多いです。頭痛は鼻汁が頬の内側などにたまって急性副鼻腔炎を引き起こしていることによる場合もあります。この場合も解熱鎮痛薬により痛みを落ち着けて、鼻汁が減ってくれば改善していきます。
また、風邪をひくと食事量が減ることが多く、また発熱そのもので汗となって水分が出ていくこともあり、脱水が起こりやすいです。多くは軽症のもので症状は時間とともに改善していきますが、頭痛が脱水の症状の一つであることもあり得ます。できるだけ水分、食事をとるようにし、ゆっくりと休みましょう。インフルエンザ、COVID-19など一部のウイルスでは症状を早めに改善させるような薬があります。対象の方には症状やリスクに合わせてご案内しています。

どんなお薬があるの?

  • NSAIDs
    (ロキソニン®、ボルタレン®など)

    NSAIDsは炎症を抑える薬の一つです。NSAIDsは熱をさげる目的、もしくは痛みを和らげる目的で使われます。内服して数十分程度で効果が出てきます。薬の効果で解熱し、のどの痛みが和らいでいるうちに十分な飲水を心掛け、食事をとるようにしましょう。副作用として胃炎、胃潰瘍、腎機能障害、喘息の悪化などがあります。これまでに問題があった方はアセトアミノフェンを処方しています。また15歳未満のお子さんおよび妊婦さんでは、全例禁忌ではありませんが、安全のため基本的にはアセトアミノフェンを処方しています。
  • アセトアミノフェン
    (カロナール®、アンヒバ®など)

    NSAIDsよりもマイルドな効果となりますが、副作用が少なく、幅広い方に使うことができる薬です。主にお子さん、妊婦さん、腎機能に問題のある方、胃潰瘍などがある方、NSAIDsで喘息が悪化する方に、NSAIDsアレルギーの方はNSAIDsが使いにくいため、こちらを処方しています。内服して数十分程度で効果が出てくること、効果が出ているうちに飲水や食事をしていただくのがおすすめなのはNSAIDsと同じです。また特にお子さんでは解熱して身体が楽になることでゆっくりと眠り、身体を休めることもできます。剤形も座薬、粉薬、シロップ、錠剤など豊富にあります。1歳未満くらいのお子さんには特に座薬が使いやすくおすすめです。使い方がわからない方には看護師がご説明しております。
  • カルボシステイン
    (ムコダイン®

    たんを排出し、切ることのできる薬です。このお薬は飲むことで直接的に何かがよくなったという実感に乏しいのか、やめてしまわれる方も多いのですが、たんを切ることによって咳が改善することが多いため、1日3回しっかりと飲んでいただくことにとても意味があります。
  • 咳止め
    (メジコン®、アスベリン®、コデインリン酸塩など)

    咳を止める効果がある薬です。いくつか種類がありますが、効果の高いものを中心にお出ししています。咳をぴたりと止めるわけではなく、また発作的な咳への効果は乏しいですが、症状の改善には役立ちます。咳は身体を消耗させます。カルボシステインで痰をしっかりと切りつつも、咳止めも併用することで身体が楽になります。特に姿勢の関係で夜間はたんが落ちて咳になりやすいです。睡眠も阻害されるため、睡眠前には咳止めも併用するのが効果的でしょう。妊娠中、授乳中、お子さんでは使いにくい薬剤もあるため、それぞれの状況に応じて処方しています。
  • インフルエンザの薬
    (タミフル®、ゾフルーザ®、イナビル®、リレンザ®

    インフルエンザと診断された場合に使用することがあります。症状緩和の一環として症状が出る期間を少し短縮することができると言われています。剤形は粉薬、カプセル、錠剤、吸入があります。お子さんでは最も飲みやすいタミフル®(粉薬)の処方が一般的です。おとなの方は状況に応じて選ぶことができます。妊婦さんはタミフル®、イナビル®、リレンザ®が適しています。副作用として嘔気、嘔吐、下痢などのおなかの症状が出ることがあります。
  • COVID-19(新型コロナウイルス)の薬
    (ゾコーバ®、パキロビット®、ラゲブリオ®

    COVID-19(新型コロナウイルス)と診断された場合に使用することがあります。発症後5日以内であれば、希望があれば処方が可能です。リスクの高い高齢者の方、糖尿病などの基礎疾患をお持ちの方にはおすすめすることがあります。ウイルスを直接殺すような効果はありませんが、症状緩和の一環として症状が出る期間を少し短縮することができると言われています。催奇形性といっておなかの赤ちゃんの奇形につながる恐れがあり、妊娠の可能性がある方を含め、妊婦さんには禁忌となっております。そのほか授乳中の方、お子さん、併用禁忌となる薬剤をお飲みの方でやめることが難しい方には適応がありません。

予防方法は?

完璧に予防する方法はありませんが、いくつか努力できることはあります。食事前やトイレなどのタイミングで手洗いをすること、顔を触らないように心がける、必要に応じてマスクをする、などです。また睡眠時間が不足している、疲れている、かなりのストレスにさらされている、などの状況では身体の抵抗力が弱まり、風邪をひきやすいと考えられます。規則正しい生活や睡眠をしっかりととること、ストレスをできるだけ取り除くことなども広義の意味で予防になるでしょう。