内科

貧血

どのような病気?

体内に蓄えられている鉄が不足し、赤血球(その中に含まれるヘモグロビン)は鉄を原料とするため、全身の臓器に酸素を運ぶ赤血球の働きに影響が出ます。

症状は?

慢性的に起こる場合、症状がないことが多いです。ただし、病気としての自覚がないだけで爪の菲薄化や異味症(氷を好んで食べる)、むずむず脚、軽い息切れ、倦怠感などなんらかの症状がみられることも珍しくありません。そういった場合には症状から貧血をピンポイントで疑うことは難しく、健康診断などで血液検査をした場合に指摘されるケースが多いでしょう。
(なお、余談ですが、一般的には学校の朝礼で倒れるようなものを「貧血」ということがあると思いますが、医学的にはあれは貧血ではありませんし、本来の貧血の病態とはまるで異なります。では学校の朝礼で倒れるのは何というのでしょうか?患者さんへの説明として使うときはわかりやすさ優先で「脳貧血」ということもありますが、「迷走神経反射」というのが正しいです。)

原因は?診断は?

明らかな吐血や下血は急性貧血として急なふらつき、意識障害などの原因となります。ここでは慢性的な貧血のお話をしますが、それでも出血はよくある原因の一つです。最もよくあるのは女性の場合月経による出血です。特に疾患がない場合もありますが、子宮筋腫など疾患を伴うケースもあるので、基本的に婦人科受診をおすすめしています。疾患がなくとも過多月経の方はピル内服で過多月経を抑えられるだけでなく、月経痛など月経前症候群(PMS)もコントロールできますので受診が望ましいと考えます。
男性や閉経後の女性では消化管出血の可能性も高いため、まずは内視鏡検査をおすすめしています。特に血便やタール便がある場合には出血がかなり疑わしくなります。40代以降の女性で初めて貧血を指摘された場合でも妊娠初期に貧血を指摘されたことがある、献血ができなかったなどがあれば鉄欠乏性貧血の可能性が高く、内視鏡検査を行わずに治療を行う場合もあります。貧血の7割程度と最も多い原因は鉄欠乏です。そのほか出血以外では、溶血、生成不足、鉄の利用障害、過度なダイエット、妊娠、胃の手術後、悪性腫瘍など多岐にわたります。

治療は?

月経による出血が原因となっているケースでは婦人科受診の上で月経コントロールを行いつつ、フェロミア®(鉄剤)を内服します。嘔気などの副作用があるため、胃薬を一緒にお出しすることもあります。月経が原因の場合には鉄剤の内服で一時的に貧血が解消されてもやめてしまうとまた貧血になることが多く、閉経まで鉄剤が必要となることも多いです。月経コントロールがうまくいき、鉄剤が不要となるケースもあります。出血を伴わない場合にはフェロミア®(鉄剤)を内服し、フェリチンという体内の鉄の貯金が十分になるまで内服を続けます。血液中の鉄が十分になってからフェリチンが増えてくるため、数か月~半年ほどかかることが多いです。
この様子は財布の中のお金(血液中の鉄)と貯金(フェリチン)にたとえられます。財布の中のお金がないのに貯金をすることはできませんね。ですから増えてくる順番は血液中の鉄が先なのです。貧血になる場合にも同じようにたとえられ、財布の中のお金(血液中の鉄)を使い果たしたら貯金(フェリチン)をおろしますね?ですから減るのも血液中の鉄が先です。また、正常の状態から貯金を使い果たす(フェリチン低下)まではそのようにして数か月程度かかります。