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病気とケアの基礎知識

病気とケアの基礎知識

胃潰瘍

胃潰瘍について

胃潰瘍とは、ある一定以上の深さで胃の壁が深く傷ついている状態のことです。胃壁は粘膜固有層・固有筋層・漿膜(しょうまく)などからなっており、障害は損傷される深さによってびらんと潰瘍に分類されます。粘膜固有層までの障害がびらん、粘膜下層よりも深部にまで傷が及ぶのが胃潰瘍です。

胃潰瘍の原因

主な原因として、「ピロリ菌感染」や「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服」の2つがあげられます。健康な胃は「攻撃因子」である胃酸やペプシンなどから自己を守るために、胃粘液を分泌するなどの「防御因子」により粘膜表面を保護しています。しかし、粘液や血流が減少して防御因子が弱まり、胃の壁が損傷されると、胃の壁は粘膜下より深い部分までえぐられます。この状態を胃潰瘍といいます。ピロリ菌や痛み止めのNSAIDsは防御因子を弱らせる原因となります。特に胃潰瘍の原因の7割以上がピロリ菌とされており、十二指腸潰瘍では9割以上を占めています。

その他の原因

ストレスや睡眠不足、暴飲暴食、喫煙や大量の飲酒も胃に負担がかかるため胃潰瘍の誘因となります。ストレスが胃潰瘍の原因になることは多く、急性の強いストレスは急性胃潰瘍の原因となっています。

  • ストレスや睡眠不足
    イライラ、過労、睡眠不足、緊張・不安、肉体的・精神的ストレスなど
  • 暴飲暴食
    寝る前に食事をとる、よく噛まない(早食い)、不規則な生活など
  • タバコ・飲酒
    タバコは胃粘膜の血流を低下させるため胃潰瘍の引き金となることがあります

胃潰瘍のステージ

潰瘍の内視鏡的分類には、活動期、治癒過程期、瘢痕期のステージに分類されます。

①活動期(急性期)

潰瘍が活発に活動している急性期で、血の塊の付着や血管の露出、出血などが見られ、また潰瘍の辺縁は浮腫状に膨らみます。

②活動期

急性期に比べきれいな白苔に覆われるようになり、露出血管や血の塊の付着はなくなり、潰瘍辺縁部の浮腫も減退します。

③治癒過程期

治癒過程期で、潰瘍が小さくなり始める時期です。白苔は薄くなり、潰瘍辺縁の浮腫は消褪し赤色の再生上皮の出現が見られます。

④瘢痕期

瘢痕期で、潰瘍の白苔は消失し、赤色の瘢痕となります。

症状について

胃潰瘍の症状は、原因や胃の壁の障害の深さによって異なります。初期の段階でみられる典型的な自覚症状は、みぞおちの中央あたりに生じる鈍い痛みである心窩部痛です。
また、潰瘍によって胃の蠕動運動が障害されると、げっぷ、胸やけ、吐き気、胃もたれ、腹部膨満などが生じることがあります。
潰瘍がさらに進行して胃の壁の血管を侵食すると、出血が起こります。そのため、下血や吐血の症状が出ることがあります。また、出血量によっては貧血が引き起こされます。

治療について

治療の流れ

療のポイントは、症状の早期改善、潰瘍の治癒、再発防止の3つです。胃潰瘍の治癒は原因によって異なります。

吐血や下血があり、活動性の出血がある急性期では、内視鏡的止血療法を施行します。止血方法は、クリップ、薬物の局部注射、熱凝固止血、薬剤の散布などがあります。
当院では、主にクリップ止血やトロンビンなどの薬剤散布を実施しており、止血が困難である場合は、血管止血法や外科手術がおこなえる専門病院への転院搬送となります。
内視鏡的止血治癒のほかは、薬物治癒が中心となります。痛み止めのNSAIDsが原因の場合は、なるべく痛み止めの中止・変更が検討されます。
同時にPPIと呼ばれるプロトポンプ阻害薬などを併用し、内科的薬物療法が検討されます。必要なときには、内視鏡再検査で止血や潰瘍の治癒を確認し、再発防止のために内服治癒を継続します。

その他の原因

再発防止のためにピロリ菌除菌は重要になります。ピロリ菌の診断には胃カメラを使用する方法と使用しない方法があります。使用する方法には迅速ウレアーゼ試験、顕微鏡で観察する鏡検法、培養法があります。胃カメラを使用しない方法には、尿素呼気試験、血中・尿中の抗体検査、便中ヘリコバクター抗原検査があります。
迅速ウレアーゼ検査が陰性の場合でもピロリ菌感染が強く疑われる場合は、便検査か抗体検査の追加が行われることがあります。ただしウレアーゼ検査はPPI(胃酸の分泌を抑える薬)を内服している方は、正確な検査結果が出ません。ウレアーゼ検査ができなかった方には、検査後に血中抗体検査を行います。この場合抗体陰性でもピロリ菌感染が強く疑われる場合は内服薬が変更可能なら変更後に便検査を行うことがあります。
ピロリ菌の除菌療法とは、1種類の「胃酸の分泌を抑える薬」と2種類の「抗菌薬」の合計3剤を同時に1日2回、7日間服用する治療法です。すべての治療が終了したあと後、4週間以上経過してからピロリ菌が除菌できたかどうかもう一度検査する必要があります。除菌後の効果判定には、尿素呼気試験か便の抗原検査が用いられますが、尿素呼気試験法で判断することが多いです。
正しく薬を服用すれば、1回目の除菌で成功率は75%といわれており、最近では約90%とする報告もあります。一次除菌で除菌できなかった場合でも、2種類の抗菌薬のうち1つを初回と別の薬に変えて再び除菌療法を行い、ほとんどの場合除菌が成功するといわれています。

胃潰瘍治療後やピロリ菌除菌後の胃カメラによるフォローアップ

胃潰瘍の治療後や除菌後には、年に一回程度の胃カメラによるフォローアップ(観察)を行なっていきます。
胃潰瘍は消化性潰瘍の一種で、多くの場合治療が成功するとされていますが、重症の場合や治療しても症状が改善しない場合は、胃カメラ検査で他の原因を特定することも重要です。 症状が長引く場合は、治療が終わってから内視鏡検査などのフォローアップが必要かどうか専門医に相談することをおすすめします。
また、ピロリ菌の除菌治療後に発見される胃がんは、「除菌後胃がん」と呼ばれます。多くの胃がんは、ピロリ菌に感染している人から見つかることが報告されており、除菌治療を行うことで、胃がんの発生リスクは約半分から3分の1に減少するとされています。このため、ピロリ菌を除菌した後は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発防止や胃がん予防のため、定期的な胃カメラ検査が必須です。 除菌によって胃がんリスクは低下しますがゼロになるわけではなく、特に胃体部萎縮の強い症例(胃潰瘍、早期胃がん、胃腺腫のEMR後胃)は除菌後の胃がん発生に注意して年に1回の定期的な胃カメラ検査を行う必要があります。 ピロリ菌を除菌して5年以内は、毎年内視鏡検査を受け定期的にフォローアップすることがおすすめです。

再発防止のために

一人暮らしの人は特に退院後、入院前と同様の生活ペースに戻ってしまい、胃潰瘍を再発してしまうことがあります。退院後も胃潰瘍の再発に気を付けた生活を送ることが大切です。

  • 栄養バランスのよい食事、消化吸収のよい食事をとること
  • 油は胃の中にとどまっている時間が長いため消化が悪く、胃の負担も大きくなるため、揚げ物は控える
  • 食べ物は、よく噛んで唾液と混ざり合わせることで、消化されやすくなり、胃への負担も軽くなるため、咀嚼を十分に行い摂取する
  • 極端に熱いものや冷たいものも刺激になるため控える
  • コーヒーは胃粘膜の刺激になるため控える。どうしてもコーヒーが飲みたいという方は、空腹時を避け、ミルクをいれるようにし、何杯も飲まない
  • 一度にたくさん食べてしまうと弱っている胃に負担をかけてしまうため、一回の量を少なくし、4〜5回に分けて食べる

胃潰瘍は、当院の消化器科で診療を行っております。お気軽にご相談ください。