病気とケアの基礎知識
風疹と麻疹
風疹・麻疹は、感染力の強いウイルスによる感染症です。一番の予防方法は、ワクチン接種により免疫を獲得することです。ご自身の身を守り、社会の中で流行を防ぐため、免疫獲得状況と予防接種を受けているかどうかを、今一度確認してみませんか?
ウイルス性疾患の感染力の強さについて
感染症の感染力を示す指標のひとつに「基本再生産数(R0)」があります。
一人の感染者が、誰も免疫をもたない集団に加わったときに、平均して直接感染させてしまうと推測される人数を示す数値です。
感染力が強ければ強いほど、たくさんの人に感染するため、数値は大きくなります。毎年冬に流行して、学級閉鎖もしばしば起こしてしまうインフルエンザ。このインフルエンザの基本再生産数は1-2とされています。これに対して…
麻疹は、免疫の持たない人は「感染している人と廊下ですれ違っただけでも感染する」と言われているくらいです。上記の中で、病気の感染力がとても強い感染症です。
風疹(三日はしか)について
風疹は、風疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。
症状
風疹ウイルスに感染すると、2-3週間の潜伏期を経て、典型的な症状として発熱・リンパ節の腫れ・発疹の3つが現れます。
- リンパ節の腫れ
- 発症時まず耳の後ろや首の周りを中心としたリンパ節が腫れ、熱が下がった後も数週間持続します。
- 発熱
- 風邪のような症状、微熱が出現しsます。その数日後に発疹が出現するとともに高熱となります。熱は数日で比較的速やかに下がります。
- 発疹
- 風疹の発疹は体の広範囲に淡く小さいぶつぶつがでることが多いです。数日で痕を残さずきれいに消えてしまうことがほとんどです。
注意が必要な合併症
血小板減少性紫斑病、脳炎、肝炎、溶血性貧血、進行性風疹全脳炎などの報告があります。
血小板減少性紫斑病以外はかなりまれであり、基本的に感染した人が重篤化することはあまりなく、回復する疾患です。
検査について
診断のための検査
症状のみでの診断は困難です。血液検査により、抗体価を調べて診断します。
免疫があるかどうか調べる検査
血液検査で、抗体価を調べて判定します。
治療と出席停止期間
解熱剤などによる対症療法です。特効薬はありません。
風疹は「第2種学校感染症」ですので、発疹が消失するまで出席停止とされています。
麻疹(はしか)について
麻疹(はしか)は麻疹ウィルスによる感染症です。感染力の非常に強いウイルスです。
症状
麻疹ウイルスに感染すると、10日前後の潜伏期を経て、38~39℃程度の発熱が現れます。
- カタル期
- 最初に風邪のような症状とともに発熱があります。
結膜炎症状も認められることがあります。 - 発疹期
- 一度熱が低下したあと、皮疹とともに高熱となります(2峰性発熱)。
皮疹は顔面を含めた全身に浮腫状の赤みの強い皮疹が出現します。
少しずつ褐色調に変化し消退しますが、時間がかかります。 - 回復期
- 解熱、皮疹の消退を認めますが、色素沈着が残ります。
- コプリック斑
- 皮疹が出現する直前にほほ内側に小さな白いつぶつぶが現れます。
皮疹とともに数日で消退します。
注意が必要な合併症
肺炎
ウイルスそのものによる肺炎のほか、細菌性肺炎の合併もあります。時に致死的となります。
脳炎
ウイルスによる脳炎が報告されています。時に致死的となります。
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
麻疹罹患後、平均7年ほどの経過後に発症する脳炎です。発症の理由はわかっていません。意識障害や全身性の麻痺などを生じ、発症してしまうと、予後が極めて不良の疾患です。根本的な治療法は確立されていません。
*肺炎と、脳炎は麻疹による2大死因です。
*麻疹ウイルスは体内に入ると全身のリンパ組織内で増殖して一過性に強い 免疫抑制状態を作り出します。このため麻疹ウイルスそのものによるほか、合併した他の細菌、ウイルス感染症が重症化してしまうこともあります。
検査について
診断のための検査
症状のみでの診断は困難です。血液検査により、抗体価を調べて診断します。
免疫があるかどうか調べる検査
血液検査で、抗体価を調べて判定します。
治療と出席停止期間
解熱剤や点滴などの対症療法です。特効薬はありません。
麻疹は「第2種学校感染症」です。解熱後3日を経過するまで出席停止とされています。
風疹と麻疹、両方の免疫をつけるワクチンです。成人が風疹・麻疹ウイルスに感染すると重症になる場合が多く、特に妊娠初期の妊婦が風疹にかかると赤ちゃんが先天異常を含む疾患を発症する危険性が高くなるため、成人にも接種が推奨されています。
風疹と麻疹のワクチンってどんなもの?
ワクチンには、弱毒生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイドの3種類があります。風疹、麻疹のワクチンは弱毒生ワクチンです。
これは病原体の毒性を弱めたものを材料にして作られたワクチンです。より自然感染に近い強力な免疫獲得が期待できます。
| ワクチンの種類 | 原理/対象の感染症 |
|---|---|
| 弱毒生ワクチン | 病原微生物を弱毒化して生きたまま接種する。自然免疫に近い強力で長期にわたる免疫の獲得が期待できる。
結核(BCG)/麻疹/風疹/ムンプス/水痘/ロタウィルス/ポリオ/黄熱
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| 不活化ワクチン | ホルマリンや紫外線で不活化、増殖能力をなくした病原微生物の菌体成分を用いて精製。 免疫原性は生ワクチンよりも弱く複数回の接種が必要。終生免疫は期待できない。製造段階で微量の異種蛋白の混合があり、副反応の要因となる。 インフルエンザ/B型肝炎/A型肝炎/百日咳/日本脳炎/コレラ/狂犬病/HPV/肺炎球菌/インフルエンザ菌B型
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| トキソイド | 病原体から産生される毒素を無毒化して得られたトキソイドのワクチン。
破傷風/ジフテリア
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ワクチンを打てない場合について
投与不適当者=接種してはいけない方々
●妊婦
*妊娠可能な女性の場合、接種前1か月、接種後2か月の避妊が望ましいです。
*ただし、接種後に判明した妊娠については予防接種を受けたことが中絶の理由にはなりません。
●適切な治療方針の決定のためにもアレルギー検査(抗原検査)をおすすめします。
●アレルギーとしての治療は症状の強い時期だけ使用しても投与を中止してしまうと短期間で再発しやすいです。
●花粉症が自然に治る(自然治癒)は少なくスギ花粉では自然治癒率はわずか数%と言われています。長期に病気を改善したり治癒できる方法はアレルゲン免疫療法になります。
副反応について
●過敏反応(発熱・じんましん・掻痒・アナフィラキシー)
●注射部位反応
●だるさ・発熱(接種数日後に、鼻水や咳などを伴う場合もあります)
●麻疹様発疹(10-20%の方に出現)
年齢別のワクチン接種状況について
自分がワクチンを接種しているかどうかについては母子手帳による確認が必要ですが、手元に母子手帳がなかったり、記憶が定かでない場合もあると思います。
ワクチン行政は、これまで度々変更・見直しが行われてきました。定期接種の機会がなかったか、あっても不十分な免疫獲得にとどまっている可能性のある方々がいらっしゃいます。
以下に該当する方々は、その可能性が高いと考えられます。
出生年別・ワクチンの接種状況
風疹ワクチン
以下の方々は、一度もワクチン接種をされていない可能性が高いです。
1979年4月2日以前出生の男性
1962年4月2日以前出生の女性
2019年度より、対象者に風疹の抗体検査と、抗体がなかった場合の予防接種を無料で受けることができる事業が開始されます。
麻疹ワクチン
以下の方々は、一度もワクチン接種をされていない可能性が高いです。
1972年9月30日以前出生
定期接種の機会がなかった可能性が高いです。
1977年4月2日~1990年4月1日生まれ
1回接種のみで免疫が不十分な可能性が高いです。
1990年4月2日~2000年4月1日生まれ
移行措置のため1回接種の可能性があり、免疫が不十分な可能性があります。
定期接種を打っていても、長期間経過した間に免疫力が低下している場合もあります。現在のご自分の免疫力を確認するには、抗体検査が望ましいと考えます。
ワクチン接種で、先天性風疹症候群から
赤ちゃんを守りましょう
先天性風疹症候群とは?
風疹において最も問題となるのは、「先天性風疹症候群」です。
妊娠20週までに抗体を持たない妊婦さんが風疹ウイルスに感染してしまうと、赤ちゃんが先天異常を含むこの疾患を発症する危険性が高くなります。
症状は、先天性心疾患(動脈管開存症が多い)、難聴、白内障、低出生体重、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、間質性肺炎、髄膜脳炎など多岐にわたります。
風疹が私たちの間で流行してしまうと、これから生まれてくる赤ちゃんに重大な影響を及ぼしてしまうのです。
先天性風疹症候群の予防には、
ワクチン接種を
先天性風疹症候群の予防には、ワクチンが有用です。妊娠を希望されている女性で、風疹に対する免疫が十分でない方々には、ワクチンを事前に接種することが勧められています。同時に非常に重要なことは、妊婦さんが感染しないよう、男性も女性も、社会全体で予防意識を高く持ち風疹を流行させないことが大切です。現在の日本では、特に一部の世代の男性の風疹に対する免疫力が不十分と考えられています。
生まれてくる赤ちゃんのために、今一度ご自身のワクチン接種歴、免疫獲得の状況の確認をお願いいたします。
当院では抗体検査や予防接種についてのご相談を
随時受け付けております。お気軽にご相談ください。
風疹と麻疹は、当院の内科で診療を行っております。
お気軽にご相談ください。